KINZAI Financial Plan 執筆

円滑な事業承継に向けた、親族内新旧経営者に係わる権利関係の整理

甲社は、A氏が経営する自動車部品製造会社である。

わが国の国産自動車メーカーや大手部品メーカーが、製造拠点や調達先を海外に切り替えて来た中、甲社はその高い技術力を背景に、主要部品や試作品の開発・製造を担った結果、現在まで業績を順調に伸ばしてきた。

甲社は、A氏が30歳で創業し、既に40年が経過している。そのため、甲社の専務取締役として同社を10年間以上支えているA氏長男でもあるB氏に、事業を徐々に承継している最中である。

そのような折り、①A氏が創業とほぼ同時に購入した本社兼工場の老朽化が進んでいること、そして②甲社のさらなる事業拡大へ向けて、これまで請け負ってこなかった量産部品の製造案件もあることから、A氏は新設備を導入した “新本社兼工場”の建設を行いたいと考えている。なお、現在の工場は、当面の間は操業する予定である。

新本社兼工場社屋の建設予定地は、次期会長であるA氏所有の土地※1が有力候補である。当該土地は、A氏が母から相続により取得して以来、使用していない遊休地であり、これを有効活用しようというものである。

税理士である私は、甲社の次期会長であるA氏から、甲社とA氏との土地の使用に関する形態について相談を受けた。

※1 事業承継に置ける先代社長の所有土地1000m2(路線価660千円/m2

1. はじめに

甲社は、A氏からB氏へ経営者が交代しようとしており、新体制への過渡期である。この点、しばしばこの時期に発生する問題として、「新経営陣に対する旧社長(もしくは新会長)の係わり方」が上げられるだろう。

甲社においては、事業の承継に伴い “新本社兼工場の建設” という経営課題が新たに発生しており、社長から会長に退こうとしているA氏が個人的に所有する土地を建設予定地としている点は、新体制へと移行しようとしている甲社にとっては小さくないトピックになる。

また、A 社が社長退任に伴って受け取るはずの退職金額と、会長として受け取る報酬額の適正な計算についても、新経営陣にとっては蒸す出来ない問題である。

KINZAI Financial Plan 2019年3月(409号) より一部抜粋

» きんざいストア